地中に熱が奪われてしまうのではないですか?
【ご質問】
冬季、地中温度18.6℃において補助熱源とかソーラーウォールなどを使用して、暖房温度20℃以上22℃を希望した場合は地中熱活用ではなく逆に、暖房熱の地中損失になるのではないでしょうか。それは基礎から地中に蓄熱されていると考えるのでしょうか。
(回答)
Tさまのご懸念はもっともなことです。
常に、熱は高い方から低い方に移動して定常状態になろうとしますから、床下を断熱しないで、建物と床下地中が熱的につながっている地熱住宅エコシステム(=伝導型地熱住宅)の場合は、地中温度が低く室温が高ければ、地中に熱は移ります。
冬の日射のある日中は室温が床下地中に蓄熱され、夜間、外気温低下で室温も下がれば、反対に熱は地中から建物に移動します。
ここで問題なのは、日中の日射や暖房熱で室温が上昇して、床下地中に熱が移動しても、その熱が床下地中にプールされない場合です。基礎断熱が弱く、床下の熱損失が大きかったり、外気温による地表面温度低下の影響で床下地中が冷やされることへの対策が無防備であったりすると、T様のおっしゃる通り「暖房熱の地中への損失」となってしまいます。エコシステムは熱を床下地中にプールさせるよう特許施工をしています。
下のグラフをご覧ください。
千葉県八千代市S邸の2009年12月の平均温度と2010年1月の平均温度を棒グラフにしました。居間の床置きエアコン1台を11月から19℃で連続暖房しています。実質延べ床面積218㎡の大邸宅です。エアコン消費電力は12月が200kWh。1月が269kWhです。
室温と床下地中温度にご注目ください。
確かに、床下は日射熱もなく暖房熱も届きにくくて家中で一番温度が低くなっていますが、床下地中温度は床下―1mが最も高くなっています。
これは、夏の熱を冬まで持ち越したものです。エコシステムの床下地中は夏から持ち越した熱が防波堤となっていますから、熱が地中に逃げるのではなく、床下地中が熱のプールになっているのです。
また、19℃で連続暖房していても、日射熱もありますから、12月は室温も地中温度も20℃程度あります。1月は同じ19℃で暖房しても、外気温が下がりますから、室温も地中も12月よりはわずかに下がります。
もし、S邸より住宅そのものの性能が低かったり、基礎外断熱が薄くて床下地中の熱が逃げやすかったり、あるいは外気温による地表面の温度低下の影響を床下地中が受けないようにする対策(敷き設断熱)が弱ければ、暖房温度を22℃以上にしても、(エアコンの容量にもよりますが)室温は20℃を切り、地中温度は15℃にもならないことがおきます。
そのようなことにならないよう、建物の性能・基礎外断熱・敷き設断熱の3拍子を、お住まいの自然条件に適したものになさいますようにお勧めいたします。