基礎断熱材の外側にモルタルを塗る理由とは?
【質問】
東北地方で高断熱・高気密住宅を建てている工務店です。
当社でも、これから外断熱工法の家を建てようと勉強しています。いろいろと調べると、外断熱工法の家といっても、基礎の内側を断熱していたり、もしくは床断熱の住宅もある事がわかりました。
私としては、やはり「基礎の外側に断熱する」方法が正しいと考えています。
そこで質問があります。
「基礎の外側」に断熱材をはる場合、表面にモルタルを塗って断熱材を保護するのは理解できます。しかし、地中部分もモルタルを塗る理由がよくわかりません。
なお、防蟻対策された断熱材を使用する予定ですが、どのメーカーも「地中部分も断熱材の表面にモルタルを塗る事」と規定されています。しかし、その理由を詳しく教えてくれません。
なぜ?地中部分も断熱材の表面をモルタルで保護するのでしょうか?
(回答)
・他の工務店さんからも同様の質問をよくいただきます。
断熱材の保護(紫外線劣化対策や傷つくのを防ぐため)だけを考えれば、地中部分まで断熱材の表面にモルタルを塗る必要はありません。
*ポリスチレンフォーム、ウレタンボード、フェノールフォームなど、板状の断熱材は全て紫外線で劣化します。詳しい内容については、下記をクリックしてご覧ください(↓)
・では、なぜ?断熱材の地中部分まで表面をモルタルで保護するのか?
それは「シロアリ対策」のためです。
・シロアリは「断熱材」であろうが、コンクリートであろうが、モルタルであろうが、どんな物でも攻撃します。以前、当社で施工していた「基礎外断熱」においては、地中部分の表面はモルタルを塗っていませんでした。そのため、下記の写真の通り、断熱材の表面に、シロアリの攻撃を受けています。
(写真をクリックすると拡大表示されます)
・写真で、茶色い筋のようなところが、シロアリに攻撃された部分です。
そこから、シロアリが断熱材の中に侵入する危険性があります。
そこで、地中部分も断熱材の表面をモルタルで保護するのです。
しかし、モルタルを塗ったからといって、シロアリが絶対に断熱材に到達しないわけでもないのです。ご存知の通り、シロアリはモルタル部分も食い破って、断熱材まで到達する可能性があります。
・そこで、防蟻対策された断熱材(断熱材の中に、シロアリが嫌がる薬剤を混入してあります)を基礎外断熱用に使用します。
・以前は、断熱材が防蟻対策されている事に安心して、当社では「断熱材の地中部分」までは表面にモルタルを塗っていませんでした。
しかし、「防蟻対策されている断熱材」でもシロアリが侵入する事が判明しました。「溶脱」という現象で、断熱材内の薬剤が抜けてしまうためです。下記のプロセスで薬剤が抜けていきます。
1)シロアリが断熱材に到達する。まずは断熱材をかじる。
2)防蟻対策されているため、かじったシロアリは逃げていく。しかし、シロアリは無数にいるので、後からまたシロアリが断熱材に到達して、表面を少しかじる。
3)上記の繰り返し(シロアリは無数にいるためです)が行われ、徐々に、断熱材の表面に傷が多数発生していきます。その傷口から、土中の水分に薬剤が少しずつ溶けていきます。
これが【溶脱】です。溶脱によって、断熱材内から、少しずつ薬剤が出て行き、断熱材の内部に薬剤の濃度が薄い部分が発生します。ここにシロアリが到達して、深く傷つけていきます。
4)上記の繰り返しがおこり、結果として、防蟻対策された断熱材でも、下記のようにシロアリが侵入するケースがあります。
*防蟻対策された断熱材を製造しているメーカーさんが、【溶脱】するかどうかの試験結果をカタログ等に載せています。この試験方法では、断熱材を綺麗にカットしたものを水中に入れて、前後で重量が減っている(つまり、薬剤が溶脱している)かどうかを判定しています。
しかし、自然界において、シロアリによって、表面が細かく傷つけられます。表面が細かく傷つけられた断熱材ではない物で溶脱に対する試験をしても、本当にそれで安心なのでしょうか・・・?この点ははなはだ疑問に思っています。
つまり、防蟻対策された断熱材のメーカーさんが「地中部分も必ずモルタルを表面に塗ってください」と規定している理由は、ずばり、【モルタルによって、シロアリが断熱材に到達する時間を遅くさせる】ためです。残念ながら、モルタル部分もシロアリによって食い破られる可能性があります。しかし、塗ってあれば、断熱材に到達するまでの時間を延ばす事は可能です。
上記の理由で、地中部分も断熱材の表面にモルタルを塗る必要があるのです。
御不明な点がありましたら、いつでも下記のフォームからご連絡ください。
【追伸】
・私は「防蟻対策された断熱材+地中部分もモルタルを塗る」だけでは、完全に断熱材をシロアリから守れるとは思っていません。
それでは、「基礎外断熱」をやめるのか?
いえいえ、温熱環境を考えると、基礎の外側に断熱する方が絶対に効果があがります。
そこで、「防蟻対策された断熱材+地中部分もモルタルを塗る」にプラスして、下記の対策を行っています。(クリックして、詳しい内容をご覧ください)
○防蟻処理方法を変更したのですか?(基礎外断熱工法専用の防蟻処理方法について)
基礎外断熱専用のシロアリ防除工法である「タームガード」を併用しています。
また、ecoハウス研究会会員及び高断熱・高気密住宅に熱心に取り組んでいる友人(工務店)達と一緒に「タームガードの共同購入(タームガードの施工費用を安くするため)」にも取り組んでいます。
「タームガードの共同購入」に興味のある工務店さんも、下記からご連絡ください。