信頼している工務店さんだからこそ「完成保証」をしてもらってください!

【ご質問】
工務店は、無借金経営なのでハウスデポなど完成保証など無駄なお金は必要無いなどと言っています。優良な工務店でも「完成保証」は必要なのでしょうか?

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(回答)
・完成保証の点についてお答えいたします。
私は「この問題」が建築業界が昔から抱えている大きな問題だと思います。
建築業界において、建築代金の支払いに関する取り決めが非常に「お施主様不利」に設定されています。
住宅業界の慣例では、お施主様からのお支払は、基本は
「契約時33%」「上棟時33%」「完成時34%」(いわゆる、3分の1・3分の1・3分の1です)となっております。
通説(確かではありませんが)では、昔は、一般の人はなかなか家を建てることができない(住宅ローンなどない時代)ため、「お施主様」はお金持ちが多く、そのため、「お施主様」と「大工さん」の立場を比較すると「お施主様の立場」の方が強かったため、このような「大工さん(建築会社)」有利の支払い方法になったようです。

また、おそらく、昔の大工さんは建築資材等を仕入れる際、「建材店等から前払い」を要求されていたのではないでしょうか。そのため、契約時に3分の1ほどの金額をもらわないと、建築を着手できなかったのではないでしょうか。(私、そのころは建築業界におりませんので、勝手な憶測です)

しかし、最近では、どこの工務店も「資材代金の前払い」を要求されることはありません。むしろ、後払いになっています。
一般的には、工務店が建材店等に資材の代金を支払うのは「月末閉め翌月末払い」です。(手形をきっている会社ではもっと支払い期日が後になります)

この状況において、
「契約時33%」「上棟時33%」「完成時34%」というお支払時期に近い内容の場合、お施主様は一時的に「過払い」(実際に発生する費用以上に先に支払ってしまっている状態)状況になってしまいます。

「過払い」は非常に危険です。「アーバンエステート詐欺事件」は別格(特別に悪質です)としても、「過払い」の状況で、もしも、その建築会社が倒産したら・・・、泣き寝入りです。

・工務店の場合、無借金経営(これはキャッシュフローが借金無しでもまわっている状態です)にするのは簡単です。
例えば、一般的な支払い条件(工務店から建材店/職人への支払い条件です)では「月末閉め翌月末払い」となっていますが、これは最長で2カ月分、最短で1か月分の買掛金(将来、建材店や職人などへ支払う必要がある金額)が発生しています。

これは変更が可能でして、「月末閉め翌々月末払い」にすれば、「最長で3カ月分、最短で2カ月分」の買掛金が発生しています。
さらに、「月末閉め翌月末手形180日」などという長期の手形を発行している工務店もありますので、こうなると「最長で8カ月分、最短で7カ月分」の買掛金(他社への支払い金額)が含まれている経営になっています。

・つまり、
○お客様からの入金:過去の慣習を踏襲している=工務店が非常に有利
○業者への支払い:最近の慣習=工務店が非常に有利

となっていまして、どちらも工務店有利な状況になってしまっているのです。支払いの期日を遠い先に設定してしまえば(これを建材店や職人が受けるかどうかは別ですが)金融機関から借金をしなくても会社の支払いは楽になります。ただし条件が付きます。それは「仕事をとり続ける事」が必要になります。右肩上がりの成長を続けた「バブル期」までは、この支払方法でも会社の資金繰りはまわっていけたと思います。
しかし、現在は「右肩下がり」ですので、支払い期間を長く設定するばするほど経営は苦しくなります。支払い資金を確保するため、無理な仕事も無理に受注しなくてはいけない状況になります。いわゆる自転車操業です。

住宅業界においては、上記の悪しき慣習によって、会社が「無借金経営」と「会社の財務内容が健全である」ことは全く関係がありません。
*会計の本などを読みますと、資金繰りを好転させるには「売掛金(入金)をできるだけ早く回収し、買掛金(支払い)をできるだけ先に延ばしなさい」などと書かれています。 右肩上がりの業界においてはこの方法は正解だと思います。しかし、少子化によって市場が縮小する住宅業界においては、この方法は間違っていると確信しています。

・一方、工務店の一部においても、上記の慣習は下記の点で良くないと考えるところが増えてきました。

○会社の努力がなくても、構造的に(慣習的に)キャッシュフローがまわる状態なので、工務店経営者が自社の財務内容を細かく精査しようとしなくなる。

○そのため、いつか「会社を整理する時」が来た時、膨大な買掛金を支払う原資が不足する(これが債務超過です)。
*会社を整理する時とは、倒産等だけではありません、事業継承者がいない場合、どうしても整理せざるをえません。
仮に、事業継承者が存在したとしても、膨大な買掛金が存在している場合、「後を継ぎたくない」と考えてしまいます。

・そこで、「余分なお金が入ってきてしまうから、使ってしまう」(預金口座にお金があるからといって、それらが全て剰余金ではありません。その中には将来の支払い原資が含まれています。しかし、建築代金は高額であるため、口座に残っているお金を全て【使用可能】と勘違いしてしまう経営者が多いのです。残念ながら)という悪循環をただすため、「第三者が建築代金を保全する」という正しい姿に変えようという取り組みが【完成保証制度】の主旨でもあるのです。

・ハウスデポ(ハートシステム)という「第三者が建築代金を保全する仕組み」は、短期的には「お施主様のため」と言えますが、長期的に考えると、「工務店の財務内容を適正にする」ための最善の方法です。(会社が使用可能なお金しか入金されません。つまり、建築資材・職人さんの手間代など「支払う必要があるお金」には一切手が出せない仕組みだからです)
また、特に当社のような特殊な工法で家を建てる場合、一般的な完成保証制度(工務店が倒産したら、残りの工事を別の工務店が引き継ぐ方法)では十分な性能・機能を保証できません。(詳しい内容は下記をクリックしてご覧ください ↓)
こだわりの家づくりにおける「完成保証」とは?

・ちなみに、このシステムを導入する際、「債務超過」もしくは「自転車操業」(Aさんの建築代金を、Bさんの建築支払いにあてること)状態である場合、システムを導入することができません。
なぜなら、Aさんの「契約金」を他の用途(他のお施主様の建築工事代金の支払い等)に使えないからです。
ハートシステム(第三者が建築代金を保全する方法)を導入できる/できないは、建築会社の財務内容次第です。(無借金経営といっても、債務超過になっていたとすれば、このシステムに切り替える事は自殺行為です)

・相手の工務店を信じる/信じないという事とは別次元の話です。
相手の工務店の財務内容を信じていない場合、そんな会社には誰も依頼しません。信じているからこそ、そこに請負契約を依頼するわけです。(アーバンエステートのお施主様達だって、当時、会社を信頼していたから多額の前払いをしたわけです)
しかし、それとこれ(完成保証)とは別問題です。

現在、住宅業界においては、続々と「完成保証制度(もしくは建築代金の保全システム 【すまいと】などのシステムです)」に工務店が加盟しています。
ですから、声を大にして「ハートシステムでお願いします」と工務店さんにお伝えください。
*おそらく、その工務店さんは「保険制度的な完成保証」と「ハウスデポなどの第三者が建築代金を保全する方法」を混同していると思います。
必要でしたら、私がその工務店さんに「ハウスデポがいかに素晴らしいシステムであるか」を喜んで説明しますよ。(財務内容が健全であれば、ハートシステムに加入する事は至極簡単です)

・信頼している工務店さんだからこそ、「完成保証」の導入を強くお勧めしてください。結果として、その工務店さんが長生きできる会社になれるはずです。
なお、ハウスデポ/ハートシステム(完成保証)の場合、建築代金の支払い割合は下記の通りとなります。

①契約時: 10%
②着工から2カ月目: 40%
③完成/お引き渡し時: 50%

(従来の支払い方法)
①契約時: 33%
②上棟時(着工から1ヶ月目): 33%
③完成/お引き渡し時: 34%

と比べてください。(住宅ローンを組む場合でも、上棟時には総額の3分の2以上を入金することを言われると思います。そのため、銀行が「つなぎローン」を組んで、それに対応します)
完成前までに支払う金額が少なければ少ないほど「過払い」の危険を回避できます。