外断熱工法で特別注意する点はなんでしょうか?

【質問】
実家(埼玉県)が建て替えるので「外断熱の家」を建てたいと考えています。地元の工務店さんに建ててもらうのですが「外断熱工法」の経験が少ないそうです。そこで、外断熱工法に関する注意点をアドバイスしてください。

(回答)
・「外断熱工法(外張り断熱工法)」と言っても各社(施工会社)によって、様々な違いがあります。そして、各社とも「自社の施工方法がベストだっ!」と信じていますから、どれが良くて、どれが悪いということではありません。

・ですから、これからお伝えすることは、あくまでも参考情報としてお考えください。下記の方法が唯一でベストというわけではありません。

①長期間、高気密住宅にする工夫は何か?
・外断熱住宅の場合、必ず高気密住宅にしないと、住宅内の温熱環境は期待するほど効果がでません。外断熱工法では「板状の断熱材」を構造体(柱・梁・土台など)の外側にはっていくので容易に「家の隙間」を少なくすることができます。(下記の写真をご覧ください)
外断熱工法

・私達も、初めて建てた外断熱住宅においては、構造体のすぐ外側に板状の断熱材をはり、そして、断熱材と断熱材の間をテープで目止めしながら高気密住宅にしていきました。これで十分だと思います。
ただし、「長期間にわたり高気密性能を確保すること」と「もっともっと高気密化すること」を追求した結果、現在では方法を変更しています。
変更した内容ですが:

○まずは、構造体のすぐ外側に板状のものを張ること。
サーモプライ(厚さ4ミリ)という板状のものをはっています。断熱材に比べると厚みが薄いので容易に高気密化できます。
参考情報 ⇒ 【高気密住宅にするための秘訣

○次に、サーモプライの全ての継ぎ目をブチルテープ(気密テープ)ではっていきます。
高気密住宅


○その外側に板状の外断熱材をはっていきます。
外断熱工法

ここまでやれば「長期間にわたり高気密性能を確保すること」が可能だと考えています。

・さらに、「エアコン室外機と室内機との配管部分」「換気用ダクト部分」などなど、断熱材を貫通する部分は気密処理が不可欠です。
他にも細かな部分で「気密処理」が必要なのですが、それは施工マニュアルを確立することによって漏れを防ぎます。
そのため、熟練の職人さん(特に大工さん)が必要になり、経験を積むほどに漏れが少なくなっていきます。しかしながら、経験を積んだ職人さんでもミスの可能性はゼロではありません。

「ミスがあるかどうか?」をチェックする必要があります。
それが「気密測定」です。

【気密測定の目的】

・高断熱住宅は「高気密」でなければ、本来の性能を発揮しません。しかし、建築中の建物が本当に「高気密住宅なのか?」をチェックするのが【気密測定】です。

(解説)
一般的な住宅では、冬場、足元がスースーと寒いことを経験していませんか?
冬、家の中を暖めていても、部屋の上下では「温度差」が発生します。冷たい空気は重いので、足元がスースーと冷えてしまいます。(足元が冷えるのが当たり前なので、「床暖房」が快適に感じることにもなるのですが。)

家の中の「温度差」を最小限にするために【高断熱住宅】にするのですが、家に隙間がたくさんあると(つまり、低気密)、特に冬場、高断熱住宅でも「冷気」が侵入して、上下の温度差が大きくなります。
そのため、「高断熱住宅」であれば、「高気密住宅」にする必要があります。

しかし、家の隙間は目視ではチェックできません。気密性能が悪い部分(例えば、窓/サッシまわりなど)がある場合、それを見つけ出すためにおこなうのが【気密測定】です。

そのため、気密性能が悪い部分を手直しできる段階(つまり、内装工事などが完了していない時期)に【気密測定】をおこないます。
*気密測定の詳しい方法については下記をクリックしてご覧ください。
 ○気密測定試験とは?

もっとも、私達の場合、大工さんの「外断熱住宅の施工」経験が豊富なので、気密測定結果(C値)が1.0を超えることはありませんので手直し工事はおこなわれませんが、大工さんの間で「自慢しあうため」に、棟梁さん達は気密測定結果を気にしているようです。
(つまり、超高気密住宅の結果を仲間に自慢したいわけですね!)

*気密測定の様子を【動画】でご覧いただけます。下記の画像をクリックしてご覧ください。

②外壁材・屋根材の熱を直接 断熱材に伝えない工夫は何か?
・夏、日射(及び外気温)により「外壁材及び屋根材」は熱せられます。かなり高温になります。外断熱材の断熱性能は高いのですが、それでも「外壁材及び屋根材」の高熱を直接 断熱材に伝えたくはありません。

・そこで、屋根・壁ともに「断熱材の外側に通気層を作ること」にします。つまり、屋根材・外壁材の高温を直接 断熱材に伝えない工夫です。

(屋根部分の通気層)
・「屋根の断熱材」と「屋根材」の間には、35ミリの厚みで通気層ができます。

下記が屋根断熱部分です。
屋根 外断熱 通気層

写真に見える「垂木(タテ方向の木材)」の上に「屋根材用下地」がはられていきます(↓)
屋根 外断熱

そして、35ミリの空間(通気層)ができます(↓)
(画像をクリックすると拡大表示されます)


(壁部分の通気層)
・「壁の断熱材」と「外壁材」の間には、18ミリの厚みで通気層ができます。

・壁部分の外断熱材の外側に紫外線劣化防止用(詳しい内容は後述します)にタイベックシートをはります。(白いシート)
その外側から「断熱パネルビス」によって通気胴縁を構造材(柱・間柱)にとめていきます。
この通気胴縁の厚みが18ミリあります。

(下記の画像をご覧ください。タテにはってある木材が通気胴縁です。画像をクリックすると拡大表示されます)

通気胴縁の外側に外壁材をとめていきますので、外壁材と断熱材の間に18ミリの通気層ができます。

これによって、「屋根材と屋根断熱の間:35ミリ」と「外壁材と壁断熱の間:18ミリ」の通気層ができます。下記の図で青色の矢印部分が空気が流れる様子です。
通気層


③どうやって外断熱材を構造体と一体化するのか?
・外断熱工法において、広く誤解されている部分があります。それは、「断熱材を構造材に釘でとめている」と勘違いされていることです。板状のやわらかい断熱材を釘でとめていくとなんとなく抜けてしまいそうなイメージがあります。

実際、外断熱材を釘で壁にとめるのですが、それはあくまでも「仮どめ」です。

・最終的に、断熱材と構造材をとめるのは「胴縁」と「断熱パネルビス」によってです。胴縁は上記でも解説した「通気層」を確保するためのものであり、さらに断熱材を外側から押さえるものでもあります。
実際、胴縁の外側から構造材に断熱パネルビスをうっていきます。
*私たちが使っているのは「Xポイントビス 長さ120ミリ(若井産業)」です。

このようにして、断熱材と構造材をとめていますので、断熱材の外側に設置する外壁材が落ちないのです。

なお、壁部分の外断熱工事について【動画】でご説明しています。下記の画像をクリックしてご覧ください。

参考情報 ⇒  【外断熱工法の外壁はずれ落ちませんか?


④外断熱材の紫外線劣化対策は何か?
・「断熱材は劣化しませんか?」「断熱材は20年ぐらいは性能を保持できるのですか?

よくいただくご質問です。断熱材の素材はポリスチレンフォーム(発泡ポリスチレン)です。プラスチックですから、紫外線にあたらない限り劣化はしません。外断熱材の外側には外壁材・屋根材が設置されますから、紫外線が直接あたることはありません。ですから、竣工後も断熱材の性能が劣化することはないと考えています。
(ただし、私達がこの断熱材を使い始めたのが1990年からですので、まだ17年程度しか経過していません。理論的には、20年、30年以上も性能は確保できるはずですが、実績からするとたった17年です。50年ぐらい経てば、その理論値も証明できますね。)

・ですから、断熱性能が経年劣化で大きく低下することはありません。
ただし、ちょっと気になるのが「施工途中での劣化」です。屋根・壁ともに、断熱工事が終わった後、屋根材・外壁材が設置されるまでの間、紫外線があたります。短期間ですので、それほど気にする必要もないのですが、真夏に施工していると壁部分の断熱材は表面の色が白っぽく、黄色っぽくなります。これは断熱材の表面が薄く劣化しているのです。手で触ると粉っぽくなっています。紫外線劣化ですね。

・屋根部分は、断熱工事が終わるとすぐに屋根材下地工事に入っていきますから、劣化を気にすることはありません。問題になるのは「壁の断熱」と「基礎の断熱」です。その部分は数ヶ月間は紫外線があたりますので、大きな断熱性能の低下はないのですが、ちょっと気になります。
そこで、下記の対策をしています。

(基礎部分の断熱材)
下記の写真をご覧ください。白いものが基礎用の外断熱材です。その表面にモルタルを塗っています。これが「工事期間中の紫外線劣化対策」です。なお、工事期間中にモルタル表面が汚れますので、お引渡し前に、表面をモルタルできれいに仕上げ塗りします。
(画像をクリックすると拡大表示されます)

・仕上げ塗りです(↓)
基礎外断熱 紫外線劣化防止対策


(壁部分の断熱材)
・断熱材の外側に白いシートを設置していきます。(白いシートはタイベックシートです。画像をクリックすると拡大表示されます。)

・下記の写真をご覧ください。(↓) 
これは、断熱材をタイベックシートで覆い、屋外に数ヶ月間放置した後の様子です。色の違いがおわかりになりますか。「外断熱材が紫外線で劣化している状況」です。
断熱材の紫外線劣化

これによって、壁部分の断熱材が紫外線劣化することを防いでいます。

参考情報 ⇒ 【外断熱材の外側にある白い紙はなんですか?


⑤床下の湿気対策に工夫はあるか?
・外断熱住宅では基礎も外断熱にするのが一般的です。(基礎の内側に断熱する会社もありますが。)
その場合、「床下も室内」と考えます。基礎の外側に断熱をおこなうと、夏、基礎/底面がヒンヤリします(地中熱)。すると冷たくなる分 相対湿度が上がります。
また、竣工直後の数年間は基礎コンクリートに含まれている水分が多いので、これは床下の絶対湿度を上げる原因になります。

・この問題(湿気対策)を解決するには、下記の工夫が必要になります。

○湿気が多い基礎(コンクリート)に直接 土台(木材)を載せないこと。
・大切な土台(木材)を常時湿気にさらすのは嫌です。そのため、下記の写真の通り、土台の下に基礎パッキンを置きます。これによって、土台の周りも空気が流れるようになります。
(画像をクリックすると拡大表示されます)

・なお、基礎パッキンは外から基礎への通気を確保するためのものですが、私達はその用途では使用していません。この隙間は、後から 断熱材・気密テープ等で閉じられます。つまり、外から床下に外気は入りません。


○家全体の湿度を除くため、梅雨〜夏にかけてエアコンで除湿をおこなうこと。
・居住空間と床下との間で空気が流れるようにします。さらに、梅雨〜夏にかけて、床下の空気を吸い上げて2階/天井付近から放出しますので床下には「空気の流れ」が発生します。
これによって、居住空間で除湿した空気が床下にも入り、空気の流れもできます。これによって床下の相対湿度を低下させています。

・1階/居住部分と床下の間で空気に流れを確保するために、「通気巾木」(下記の写真)を設置します。
(巾木と床の間に隙間を作ります。そこから空気が流れます。)

通気巾木


細かいことを言えば他にも注意点はありますが、最低限、この5つのポイントだけでもチェックしてみてください。

★ご不明な点があれば、下記のフォームからお問い合わせください★