地熱利用って何ですか?
エコホームズのホームページをご覧いただきましてありがとうございます。
玉川和浩です。お施主様や同業者からは「タマチャン」と呼ばれております。
さて、これから、私達が住宅に活用している【地中熱利用=地熱利用】についてご説明させていただきます。非常に長い内容ですが(いつもすみませんね・・・・)最後までお読みいただけますようお願い申し上げます。
玉川和浩 |
★はじめに
高断熱・高気密住宅がなぜ求められているのか?
高断熱・高気密住宅の歴史は、1973年のオイルショックがきっかけです。その後、1978年には、北海道から「北欧の【高断熱・高気密住宅】視察」がおこなわれました。つまり、高断熱・高気密住宅の歴史はこの25年ほど前からのことです。
オイルショックがきっかけとなったのは、石油高騰により、灯油費用が大きくなった寒冷地(北海道・東北地方)において、灯油の使用量を極力減らすためです。北欧住宅(高断熱・高気密住宅)の智恵を導入しようと考えたのです。
この「高断熱・高気密住宅」は、なかなか関東地方では普及しませんでした。いろいろな住宅雑誌で「高断熱・高気密住宅」が「当たり前」のように登場しはじめるのは、この5年ほどです。
千葉県では、たった3年前でも、ハウスメーカー・工務店は口をそろえて「千葉県のように温暖な地域では【中気密・中断熱】(?)で充分ですよ!」と主張していました。
ところが、最近は、「高断熱・高気密住宅」がブームになったようで、どこの会社でも「温暖な関東地方でも、高断熱・高気密住宅は必要ですよ」と主張するようになりました。
私は、これは良い方向に向かっていると思います。
最新の工法・理論を知ったため、今までの考えを改めることは正しい行動だと思います。正しいことを知った日から、今までの自分を改めることは非常に重要です。過去の面子にとらわれていたのでは、何も進歩しません。
しかし、「高断熱・高気密住宅」と一口で言っても、本来、【「梅雨の無い北海道」の高断熱・高気密住宅】の工法をそのまま【「梅雨のある関東地方」の高断熱・高気密住宅】でおこなうと、いろいろな問題が発生します。
エコホームズが初めて千葉県で外断熱施工をスタートしたのが1990年です。当初より、「高温多湿地域に適応した外断熱・高気密」住宅であったのです。(ほぼ、現在の形に近いのですが、その後、「最新技術/部材の導入・お客様からのクレームに対する改善」などにより変わってきました)
重要なことは、「どんな目的を達成するために、外断熱+高気密住宅を建てるのか」ということを、建てる側が明確に考えているかどうかです。
各社それぞれが、自分達が信じる「ベストな家造り」を提唱しています。その中で、「どれが自分達の家造りに合致するのか」をよく検討してください。
参考までに、ここでは「私達が信じる家造りの目的」を書きます。何度も繰り返して書きますが、私達の主張だけが正しいとは思いません。
あくまでも、他社との比較検討の材料としてお読みください。
(注意)
1. ここで書かれている「外断熱(そとだんねつ)」は「外張り断熱」と表記されるべきです。さらに、「内断熱(うちだんねつ)」は「充填断熱」と書かれるべきです。しかしながら、みなさんにとって聞きなれた「外断熱」「内断熱」という表記をあえて使用しました。
2. 「内断熱」で施工すると、全て「壁体内結露」するわけではありません。各社とも、様々な工夫をおこない、内断熱であっても壁体内結露による被害を最小限にしようと日夜努力されています。
★エコホームズが考える【家造りの目的】
ほんの3年前までは、こんなふうに言われていました;
「千葉のように暖かい(?)地方では外断熱は必要無い!」
それに対して私達はこのように答えていました。
「千葉のような高温多湿地域では、構造体を梅雨時の湿気から守るために外断熱が必要です。寒い地方の外断熱とは違う目的で採用しています」
「千葉のように暖かい地方では外断熱は必要無い」と言っていた人達が、最近では、「外断熱はこれからの工法だっ!」もしくは「私達も外断熱をやりますよ!」と主張しはじめました。
それは本当に良いことです。
しかし、一時のブームで外断熱を採用しても、「目的」が明確でなければ改善の方法が見つかりません。ただ、外断熱を取り入れても、「何を造るため」に外断熱が必要なのかを理解していなければ全く意味が無いと思います。
そこで、ここを読んでいただいているあなたには、私達の家造りの目的を理解していただくため、これから長々と説明させていただきます。
1) 【エコホームズ】の家造りの目的について
◇◆長持ちする家造りについて◇◆
1990年に、千葉県で初めて「外断熱工法」を取り入れた目的は「長持ちする家造り」を実現するためです。
長持ちする家造りを実現する(目的)ためには、日本の伝統的民家の知恵を活かすことを積極的に考えました。
日本だけではなく、世界各地において、木造住宅は「非常に長い寿命を保てる」のです。
例えば;
● 法隆寺金堂:約1300年
● 桂離宮:約370年
● 中国最古の木造:約1100年
● イギリス クリンステッド教会:約900年
木造住宅は本来「長持ち」するのです。ただし、条件付きです。
「腐らない」という条件が必要になります。
木材は、呼吸できる状態(木材の廻りを空気が流れるようにする)にすれば、腐らずに長持ちしますが、封じ込めてしまい、さらに壁体内結露などで湿気を多量に帯びるようになれば腐ります。シロアリもよってきます。
壁体内結露で内断熱材にカビが発生している状態。黒い線はカビが発生しているところ。 |
これが、戦後の木造住宅に共通した「問題」です。
昔の家は、柱が露出した造り(真壁)になっていました。それは、木材をできるだけ露出して呼吸できるようにしてあったのです。
後で説明しますが、構造材(木材)が呼吸できるように施工するため「外断熱工法」を採用しました。
(この外断熱工法は、後で書きます「地熱利用」を実現するためにも必要になります)
木材が呼吸できるように、このような工夫をして、長持ちする家造りを実現しています。
外断熱工法は下図のように、構造材を外側で断熱しますので、壁空洞ができます。そこに空気を流すようにすれば、「木が呼吸する」ことが可能です。床下から壁空洞を通って小屋裏まで空気が流れるように工夫してあります。 |
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外断熱工法の場合、下図のように壁の中に空洞ができます。そこに空気を流す工夫があります。 |
(1990年に外断熱工法を採用した理由)
● 壁内結露を防ぐには、私達が知っている範囲では、外断熱工法がもっとも防止効果が高かったためです。内断熱工法の場合は、露点(結露する温度)が壁内(内断熱材内)に発生する可能性があるためです。
*内断熱工法においても、断熱材の部屋側に"完璧なベーパーバリア"(ベーパーバリア=水蒸気を通さない層)を施工すれば、部屋内の水蒸気が壁内に入らないので、理論的には、壁内で結露しないのですが、当時は、内断熱工法において、断熱材の内側(部屋内側)に"完璧"にベーパーバリアを設置することが非常に難しいため(どうしてもコンセントボックス、給排水管取り出し部分でベーパーバリアが切れてしまうためです)、内断熱工法を断念しました。
「内断熱工法」でも、理論にそって、完全に施工(ベーパーバリアを丁寧に施工する事と外壁側に開放する事)をすれば、壁内結露は防ぐことが可能です。
空気が流れる通り道(通気層)がどのようにできているのか? 下記の動画でご覧ください(↓)
また、外断熱工法で断熱施工すると「住宅の高気密化」が内断熱工法よりは容易に達成できることもわかりました。
高温多湿地域の千葉で「高断熱住宅」を建築する場合、外断熱による「高気密」が絶対に必要になります。湿気対策として最も大切なことです。
理由は下記の通りです;
1) 外断熱による高気密は、柱や土台の外側で断熱気密にするので、木部が梅雨時の100%近い湿気を吸わない。(冬は乾燥空気を吸わない。)
2) 外断熱による高気密は、柱や土台の外側で断熱気密にするので室内に外の湿気を入れない。(冬は低温乾燥空気を入れない。)
3) 外断熱による高気密は、柱や土台の外側で断熱気密にし、床下空気が壁空洞を通って自由に動くので、床下を含めた家中が1台のエアコンドライ運転で効率よく除湿される。
国レベルで、寒地住宅化を推し進めている現状では、この点の理解が残念ながら遅れているのです。せっかく、外断熱を提供している側も、その効果を意識的に活かしていない場合があるようです。大変もったいないことです。
ここで、一般に言われている気密性の効果を整理してみましょう。
1) 隙間による熱ロスを少なくする。[次世代省エネ基準テキストによる]
2) 断熱材の断熱効果を補う。
3) 気密層が防湿層を兼ねる。(繊維系断熱材の場合)
4) 計画換気をするための条件。(換気効率を高める)
この中に多湿(乾燥)外気から室内を守るという大切な効果は書かれていません。内断熱は外に開放しなければなりませんから外断熱だけの長所を言えないのでしょう。
●高断熱で低気密住宅は存在するのか?
●高気密は具体的には、どういうことか?
などと疑問が湧いてきますね。
ここで、高気密について説明します。
*高気密とは、住宅の気密性が高いということです。
住宅には「隙間」が必ず存在します。
この「隙間」(面積)が少ないと「高気密」住宅であり、隙間が多いと「低気密住宅(高気密では無いという意味で)」となります。
高気密であるかどうかを数値で測定する方法があります。
「気密測定」と言われている方法で、気密測定機によって、家の中から空気を強制的に外に出し、外気と家の中とで、ある一定の気圧差に達するまで、どれだけ空気を外に出したかを測定することによって、家の総「隙間」を測定します。この「総隙間面積」を床面積(実質延べ床面積)で割ると、住宅の「隙間相当面積=C値(cm2/m2)」が算出されます。
このC値が5.0以下である住宅を「気密住宅」であると住宅金融公庫では定めております。
ただし、換気システムを充分機能させるには、C値が0.7〜1.0であることが必要である事は、北海道あたりでは常識になっております。(北海道新聞で読みました)
右図は、気密測定の実施風景です。 |
実際に気密測定している様子を動画でご覧ください(↓)
話がそれますが、高断熱住宅で低気密住宅は存在するのです。
高断熱は、断熱材の施工(使用部材とその厚さ:断熱性能)が高断熱規格(次世代省エネルギー基準など)に適合しているかどうかであり、気密性能とは違います。したがって、高断熱仕様であっても、高気密化を意図的に施工しないと「低気密」になります。
高断熱で「隙間が多い」(低気密)と、例えば冬場、せっかく室内を暖房によって暖めても、隙間からどんどん寒気が入り込みます。寒気は室内の下部に溜まりますので(足下が寒い)、暖気は上に追いやられます。ただでさえ、暖気は上方に溜まりやすいので、室内での「上下の温度差」が大きくなります。
これを防止するためには「高気密」が必要になります。
1) 梅雨時の湿気を家の内に勝手に入れさせない
冬場の外気(低温乾燥空気)を勝手に入れさせない
梅雨時に、住宅の隙間から、無計画に、多湿空気を室内に入れることは、「梅雨を家の中に呼び込む」ことになるのです。そして、上で述べましたように、いくら気密性能が高くても、柱や土台の外側で気密にすることが肝腎なのです。木部が湿気を吸ってしまう構造になっている工法は、梅雨の100%近い湿気をシャットアウトできません。
外が「不快な」時に、家の中は快適であることを求めて高性能住宅にするのですから、高温多湿地域【千葉】で「高性能住宅」を建てる場合、梅雨時に「家の中も梅雨にしない」工夫が必要になります。
梅雨の無い北海道で建てる工法を多湿地域向けに改善する必要があるのです。
冬場も同様に、低温乾燥外気を勝手に家の中に入れないことが「過乾燥」を防ぐことになります。冬の外気は、もともと乾燥空気ですから、それが、勝手に、大量に室内に入り込むと、暖房で暖められることにより、さらに空気が乾燥します。(今までの住宅では、加湿器は過乾燥を解消するために必要になります。しかし、根本原因が「隙間風と暖房」にあるので、常に加湿器を稼動し続ける必要があるのです)
2) 計画換気を充分機能させる・除湿を効率よくおこなう
隙間がたくさんある住宅は勝手に新鮮空気が入ってくるのですが、新鮮空気が勝手に入るからといって、住宅全体が充分に換気されるとも限らないのです。
うまく全体が換気される場合もあれば、充分に換気されない部屋もできてしまう可能性もあります。「あなたまかせ」の換気になります。
ストローは穴があいていなければ、小さな吸い込み力によってジュースを飲むことができるのですが、途中に穴があいていると、思い切り吸い込まないとジュースは飲めません。
住宅においても、隙間が少なければ少ないほど、計画的に(家中が充分換気できるように換気システムを事前に計画する)、簡単な換気能力で、家全体を換気できるようになります。
また、家の中の「水蒸気」(料理=ガス燃焼をすると水蒸気が発生します。)や「臭い」を速やかに外へ排出して、新鮮空気を家中に配るためには「高気密」が必要になります。エアコンでドライ運転をするだけで、速やかに家中を除湿できるのも高気密住宅だからです。
「高断熱であれば、外側からの高気密であることが必要になる」
その重要性をおわかりいただけたでしょうか。
上記のように、夏季高温多湿・冬季低温乾燥の湿度問題をかかえる日本の「長持ちする家造り」を実現するために、「外断熱工法」「外側からの高気密」「壁内通気」「床下垂直換気」「換気システム」が必要になるのです。
次に、私達のもう一つの目的である「地熱利用」についてご説明します。
◇◆地熱利用について◇◆
1990年での「家造りの目的」は、上記の「長持ちする家造り」でした。
その後、宇佐美(住宅総合研究所 主任研究員)が入社することによって「地熱利用」がはじまります。
宇佐美が導入した原理は「アイヌの伝統的民家チセ」が利用していたものです。宇佐美は旭川郷土博物館の依頼を受けて「チセ住宅の温熱環境を解明」することに10年を費やしました。
実は、アイヌのチセ住宅は、文献等によれば、冬は暖かかったようです。極寒の地/旭川において、チセの中は冬でも暖かく、また夏は非常に風通しがよくなる構造でした。
*写真でご覧の通り、アイヌのチセ住宅は、冬は雪によって「天然の外断熱」になっていますし、外壁が笹であったため、夏は「笹の葉」が乾いて反り返るので、自然に風通しがよくなっていたそうです。エコロジー・エコノミーの両方から、究極のエコハウスといえます。
上記左図は「夏のチセ」です。非常に風通しがよい構造です。右図が「冬のチセ」です。雪が天然の外断熱になっています。(新雪はグラスウールと同じ断熱性能) |
多数の文献と証言において、その快適な住環境が言及されていますが、「なぜ快適なのか」という原理原則が判明していませんでした。
その原理を旭川郷土博物館と共同で研究し、その謎を一般住宅に応用しようと考えたのが宇佐美です。
まさに「地熱住宅の生みの親(母)」といえます。
ちなみに「地熱住宅」の地熱は、マグマの熱ではありません。太陽熱がもとになっています。ですから、日本全国どこでも利用できます。
地熱住宅の概念を簡単にまとめると下記の通りです。
1)「地熱」は太陽熱エネルギーが地中に蓄えられているものです。
*地熱(正しくは【地中熱】と言います)の利用方法は大きく分類すると2種類あります。その違いについては下記をクリックしてご覧ください。
○環境省からなにか郵便物が届きました・・・???(地中熱利用システム/全国設置状況調査報告)
2) 夏の「高温・日射」熱が地中に蓄えられ、それが伝わって、建物下の地中も夏の終わり頃にはだんだん温度が上がってきます。その上がってきた床下地中温度を、冬になっても冷え込まない工夫をして、その床下地中温度に家中が支えられる構造にしているのが「地熱住宅」です。これを特に「伝導型地熱住宅」といいます。
右図は、成田市にあったモデルハウスで、建物地下の温度測定をおこなった結果を図にしたものです。 |
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3)床下は「室内」と考えます。今までの住宅は、床下換気口があるので、床下は外気がそのまま入り込みます。冬になれば当然床下が冬になります。
*参考データ
1年間(2ヶ月毎 6つのデータ)の測定結果をご覧ください(↓)
(画像をクリックすると拡大表示されます)
建物下地中を冷やさないために、床下空間は室内と考えます。したがって、基礎にも外断熱施工します。
左図は、ベタ基礎の外側に「断熱材」を施工してある状態です。基礎外断熱と言います。 |
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4)地中を冷やさないために、床下を室内としても、その上にある建物が冷え込んでしまうと効果がなくなります。したがって、建物は「外断熱+高気密」住宅にしなければなりません。
また、断熱的に弱い窓は、高気密・高断熱サッシが絶対必要です。
これは、室温が床下地中温度を決め、その地中温度で室温が支えられる関係にあるからです。したがって、「地熱住宅」になるか、単なる高性能住宅に終るかは、窓の性能にかかっているのです。一般の高気密・高断熱サッシの目的は、暖房熱を逃がさないためです。「地熱住宅」の窓の目的は、夏から持ち越しているささやかな地中温度を冷やさないで、暖房しないでも生活できる家にするためです。
目的が明確に違うのです。
青いのが「断熱材」です。このように、建物を外側から断熱材で覆います。これが外断熱工法です |
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もちろん、屋根の部分も、外側から断熱材で覆います。断熱材の厚みは、屋根:115ミリ、壁:50ミリです。これで「次世代省エネ基準」に適応しています。 |
5) アイヌのチセ住宅」の場合、冬になるにつれ、建物下地中熱を冷えこまさない工夫として「床作り」と「アイヌの掟=1年中、土間でチョロチョロと少しだけ薪を燃やし続けること」を実施していました。
地熱住宅では、床下で火を燃やすことはできないので、下記の工夫をしています。
「床作り」⇒基礎外断熱(基礎にも外側に断熱施工します)
「アイヌの掟」⇒床下システム(家の中の廃熱を利用します)
右図は「アイヌの掟」です。土間で1年中チョロチョロと薪を燃やしていました。 |
上図が「床下システム」です。これは「冬モード」の状態です。このシステムの場合、冬は9月10日からです。夏に暖められた地熱を冷やさないため、9月10日から準備開始です。
原理は簡単!
どんなに高断熱(外断熱)・高気密住宅にしても、やはり2階天井付近には「暖かい空気」がたまっています。それを「床下システム」で吸い込み、床下へ放出します。
その熱が、床下の基礎コンクリートに蓄熱され、そのわずかな熱で「徐々に冷え込んでくる」ことを防ぎます。
家の中にあり、天井付近にたまっている熱(一般には再利用できませんよね)を再利用します。
これはアイヌの人達が利用していた原理を応用したものです。
結果として、私達の建てる住宅内で温度測定をすると、下記のようになります。
上図は、地熱住宅の「地中から室内にかけての」温度測定結果です。外気温度がマイナス2.9度でも、室内は18度前後になっています。建物下が冷え込まない状態であることがおわかりになると思います。 |
ここまでご説明すると、よく受けるご質問が2種類あります。
1) 本当に「地熱利用」の効果があるのですか?
2) 地熱を利用しているのではなく、室内からの熱が地下に逃げているだけではないですか?
というご質問です。
2)のご質問は、特に建築士の方からいただきます。みなさんの参考までに、この質問にお答えしますね。
★本当に「地熱利用」の効果があるのか?
これは、一番良い回答方法は、体感していただくことです。
できれば、真冬に体験していただくと、何も説明は必要ないようです。
しかし、あくまでも文章でご回答する必要もあります。どうしたらよいでしょうか?
下記の測定データーをご覧いただくのが一番良いでしょう。
これは、冬中暖房しないで生活された方の測定記録です。
もちろん、日中は太陽の光が家の中に入りますから、そういう意味では、熱源がゼロではありません。自然エネルギーだけを利用しても、グラフからおわかりになる通り、床下の基礎表面温度が15度前後です。外気温度(下の赤色部分)に比べて、室内が温度低下していないことがおわかりになりますね。
これが「地熱利用」です。
また、平成21年5月からお引き渡ししている「地熱住宅」においては、地中熱利用システムのコントローラーがバージョンアップして、「床下の温度・湿度の測定」「家の中の温度・湿度の測定」「外気の温度測定」が全ての建物でおこなうことになりました。
*バージョンアップしたコントローラーの詳しい内容については、下記をクリックしてご覧ください(↓)
○地中熱利用システム(エコシステム)のコントローラーが新型になりました!
*下記のように、それぞれの測定場所での測定結果がリアルタイムに表示されるようになっています。
しかし、本当に残念なのですが、この効果は「土地の条件」によって変わります。
日射取得量(日当たりが良いか?悪いか??)によって変化します。
上記のI邸は「日当たりが良い立地」でした。ですから、暖房を全く使用しなくても生活することができたのです。
ところが、日当たりの悪い場所では、「補助暖房」が必要になります。
冬の間、だいたい20度前後の温度設定でエアコン(または蓄熱式暖房機【深夜電力利用】)を24時間稼動していただいております。
「えっ!24時間も暖房機を動かしたら、大変な電気代がかかるのでは???」
とお思いですよね。
確かに、冷暖房費に電気代はかかります。冬場はエアコンの暖房運転、そして、夏場はエアコンの除湿運転(27度前後)で24時間稼動していただくのが望ましいのです。
安心してください。高断熱(外断熱)・高気密住宅では、今あなた様が想像しているほどの電気代はかかりません。実際に、地熱住宅にお住まいの方の電気使用量をご覧ください。
冷暖房にかかる消費電力を正確に測定するため、エアコン(冷暖房)用に専用の電気メーターを設置させていただきました。そして、測定した結果です。
年間の消費電力は「1560.1KWh」です。
電気代に換算すると、34,322円程度です。(1kwh=22円での計算です!)
夏と冬にエアコンを24時間稼動しつづけ、それで家全体(居間だけではないですよ)をほぼ同じ温度にする(全館冷暖房です)ための冷暖房費用は、1年間でたった3万5千円程度です。この電気代は高いですか?
*日当たりの良い土地では、暖房費がもっと削減できますね。
これが「地熱住宅」です。
★地熱を利用しているのではなく、室内からの熱が地下に逃げているだけではないですか?
これは、次の2点からご説明できます。
1. 冬場、居間の温度より、基礎表面温度の方が高いこと(冬場)
2. 名古屋大学理学部地球惑星科学科地球惑星システム学専攻 前田憲幸さんが卒論で取り上げました。
それぞれをご説明します。
1. 冬場、基礎表面温度より、地中の温度の方が高いこと
まずはグラフをご覧ください。
このグラフは、地熱住宅(成田にあったモデルハウス)の1年間の温度測定結果において、「基礎(土間)表面温度」から「居間の温度」を引いた数値をグラフにしたものです。
●基礎表面温度−居間の温度
数値がプラスである場合、基礎表面温度が居間の温度より高いことを意味します。
熱は高い方から低い方へ移動しますから、基礎表面温度が居間の温度より高いと、基礎表面温度(つまり地熱)を利用して生活していることになります。(居間は地中から温度をもらっていることになります)
下記のグラフを見ると、「10月〜4月」は【居間は床下地中から熱をもらっている】ことになります。
もしも、「室内から地中へ熱が逃げている」のであれば、居間温度より基礎(土間表面)温度の方が低いはずですね。(熱は高い方から低い方へ移動するので)
また、逆に、夏場を見ると、冬とは逆に、基礎(土間表面)温度が居間の温度より低くなっています。つまり、夏場は【居間は床下地中から地熱(冷熱)をもらっている】ことになります。
それではグラフをご覧ください。
2. 名古屋大学理学部地球惑星科学科地球惑星システム学専攻 前田憲幸さんが卒論で取り上げました。
「日本地熱学会」で、玉川住宅総合研究所 宇佐美が「地熱住宅」に関して発表したところ、名古屋大学の高野助教授と出会いました。そして、高野先生がご指導されている生徒さん(前田憲幸さん)が、私達の地熱住宅を卒業論文として取り上げることになりました。
下記が、その卒論の内容です。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 伝導型地中熱利用住宅の理論 名古屋大学理学部地球惑星科学科地球惑星システム学専攻 前田憲幸 |
<はじめに>
化石燃料に代表されるエネルギー資源の枯渇は現代社会に対する大きな脅威である。その中で我が国における全最終エネルギー消費の14.1%(2000年)を占める家庭でのエネルギー消費の低減が求められる。そのうち、住宅の冷暖房に関する省エネルギーについては、オイルショック以降様々な研究がなされており、最近では住宅の隙間をなくし断熱材で覆う高気密・高断熱の住宅が増えてきている。また、地中熱の利用による冷暖房の負荷低減という方法もある。地下の温度は数m以深では年間を通して気温の年平均程度であるという性質がある。この性質を利用することについては地熱ヒートポンプなどの様々な方法が検討されている。本研究ではその中でも住宅を基礎も含めて外断熱し、熱伝導によって地下との熱交換を行う伝導型地中熱利用住宅について、その理論を構築し、実際の測定データを用いて理論を検証し、さらに実際の建物の熱的性能を評価する方法を開発した。
<理論>
理論では、外気と室内、室内と地下との熱フローを基礎方程式として定式化した。地下の熱フローは深さ方向1次元の熱伝導とした。基礎方程式の解として、周期的に変動する外気温に対する室温、地温の応答を求めた。その結果、「地中熱利用度」、「時定数」、「地盤の熱慣性」を表す三つの無次元パラメータで建物の熱的性能を記述できることがわかった。それらの具体的な数値は、室内における人為的及び日射による発熱のない状態で数日間、気温・室温・土間床底部温度の変化を測定することで求めることができる。またそれらから気温の年周変化に対する室温の振幅比、夏・冬での室内と地盤との熱収支などを見積もることができ、個々の建物の熱的性能を評価できることがわかった。
<実際の建物の熱的性能評価>
その理論を用いて実際の住宅(エコホームズ(株)成田モデルハウス)の性能を評価したところ、建物の時定数は1/6日程度であり、日周期変動には時定数が影響するが、年周期変動には時定数の影響はほとんどないと考えられる。しかし、外気温振幅に対する室温振幅の比の理論値は日周期で0.17、年周期で0.54となり、年周期でも振幅が低減されている。これは地盤が巨大な熱溜めとして働いているからであり、伝導型地中熱利用住宅の有効性を示している。
<今後の課題>
地下の温度分布から地下での水平方向への熱流があることがわかり、今後これを理論に組み込む必要がある。また、年周変化での実測と理論との比較から、外気温とほぼ逆位相の室内発熱があることが予測された。室内発熱は主に電力使用と窓を透過した日射によるものだと考えられる。また、当モデルハウスの実測では土間床コンクリート底部の温度が計測されておらず、土間床の表面温度で代用している。これらから、室内発熱と、土間床底部の温度とを計測する必要があることがわかり、今後の実験への指針が得られた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ |
以上が、私達の【家造りの目的】です。
大変長い文章を最後までお読みいただきまして誠にありがとうございます。
ここまでの内容が、みなさまの家造りにおいて、少しでもお役に立てたなら、これほどうれしいことはございません。感謝・感謝でいっぱいです。ありがとうございます。
玉川和浩 |
【参考情報】
○住宅/冷暖房として「地中熱利用」に興味をお持ちの方へ
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