【なぜ?外側に断熱するのですか??】

【質問】
「地中熱利用」の部分を読んでいたところ、「地中熱を利用するには、建物を高断熱・高気密住宅にする必要があります」と書かれてありました。変な質問かもしれませんが、高断熱住宅の場合、外断熱工法に限らないのですか?内断熱(充填断熱)でも高断熱仕様にすれば良いのですか?


(回答)
す、するどい!!!
非常に鋭いご質問です。ありがとうございます。
確かに、「地中熱利用」だけを考えると、「基礎は外断熱が必要」ですが、建物部分は「内断熱:高断熱仕様」でも可能です。
内断熱(充填断熱)だけではなく、「パネル断熱」でも「ウレタンの吹きつけ断熱」でも大丈夫です。

ところが、充填断熱(内断熱)の場合、【壁体内結露】の発生が問題になります。
下記の写真をご覧ください(↓)
*画像をクリックすると拡大表示されます。

右側の黒くなっている部分は「断熱材の中にカビが発生している状態」です。
左側は比較するため、新しい断熱材を入れてあります。(ただし、比較のため、わざと短く切ってあります)断熱材の上部にある「黒い線」はカビの跡です。

これが構造体(木材)を腐らせる【壁体内結露】の結果発生したカビです。

また、「パネル断熱」や「断熱材の吹き付け」をおこなった場合、木材が呼吸できなくなります。つまり、「木材が空気にふれない」「木材の周りを空気が流れない」状態になってしまいます。

私達の家造りは2つの目的があります。
それは:

1)地中熱を利用すること
2)木材を長持ちさせること=住宅が長生きすること

です。

千葉県で初めて「外断熱工法」を取り入れた目的は「長持ちする家造り」を実現するためです。

長持ちする家造りを実現する(目的)ためには、日本の伝統的民家の知恵を活かすことを積極的に考えました。日本だけではなく、世界各地において、木造住宅は「非常に長い寿命を保てる」のです。
 
例えば;
● 法隆寺金堂: 約1300年
● 桂離宮: 約370年
● 中国最古の木造: 約1100年
● イギリス クリンステッド教会: 約900年

木造住宅は本来「長持ち」するのです。ただし、条件付きです。
腐らない」という条件が必要になります。

木材は、呼吸できる状態(木材の廻りを空気が流れるようにする)にすれば、腐らずに長持ちしますが、封じ込めてしまい、さらに壁体内結露などで湿気を多量に帯びるようになれば腐ります。シロアリもよってきます。

これが、戦後の木造住宅に共通した「問題」です。
昔の家は、柱が露出した造り(真壁)になっていました。それは、木材をできるだけ露出して呼吸できるようにしてあったのです。

後で説明しますが、構造材(木材)が呼吸できるように施工するため「外断熱工法」を採用しました。
木材が呼吸できるように、このような工夫をして、長持ちする家造りを実現しています。


外断熱工法は下図のように、構造材を外側で断熱しますので、壁空洞ができます。そこに空気を流すようにすれば、「木が呼吸する」ことが可能です。床下から壁空洞を通って小屋裏まで空気が流れるように工夫してあります。

外断熱と内断熱の違い

下図のように、(赤い空気の流れ)床下から壁の中を通って小屋裏まで空気が流れる工夫がしてあります。
(青い空気の流れ)は、外断熱材と外壁材の間を空気が流れるようになっている部分です。外壁材の熱(熱い&冷たい)を直接外断熱材に伝えない工夫でもあります。さらに、胴縁がシロアリ被害を受けないように、常に通気に触れさせています。
*画像をクリックすると拡大表示されます。


実際の施工写真をご覧ください(下図を参照ください)
壁の中の通気

構造体の外側から断熱することによって、壁の中に空洞ができます。
そこに「空気の流れ」を発生させることによって「木材を呼吸させる」ことが可能になるのです。
これが「伝統民家の智恵」なのです。

(1990年に外断熱工法を採用した理由)

● 壁体内結露を防ぐには、私達が知っている範囲では、外断熱工法がもっとも防止効果が高かったためです。内断熱工法の場合は、露点(結露する温度)が壁内(内断熱材内)に発生する可能性があるためです。

*内断熱工法においても、断熱材の部屋側に"完璧なベーパーバリア"(ベーパーバリア=水蒸気を通さない層)を施工すれば、部屋内の水蒸気が壁内に入らないので、理論的には、壁内で結露しないのですが、当時は、内断熱工法において、断熱材の内側(部屋内側)に"完璧"にベーパーバリアを設置することが非常に難しいため(どうしてもコンセントボックス、給排水管取り出し部分でベーパーバリアが切れてしまうためです)、内断熱工法を断念しました。

「内断熱工法」でも、理論にそって、完全に施工(ベーパーバリアを丁寧に施工する事と外壁側に開放する事)をすれば、壁内結露は防ぐことが可能です。

また、外断熱工法で断熱施工すると「住宅の高気密化」が内断熱工法よりは容易に達成できることもわかりました。

上記の理由によって、私達は地中熱利用の住宅を建てる際、【外断熱工法】を採用しているのです。