なぜ?外断熱工法だと家が長生きするのか???
みなさんからよくいただく御質問の中で、最も多いのが
「外断熱工法にすると、なぜ?住宅の寿命が長くなるのですか?」
今回は「なぜ?外断熱工法だと構造材が長持ちするのか?」について御説明します。
1990年に、千葉県で初めて「外断熱工法」を取り入れた目的は「長持ちする家造り」を実現するためです。長持ちする家造りを実現する(目的)ためには、日本の伝統的民家の知恵を活かすことを積極的に考えました。
日本だけではなく、世界各地において、木造住宅は「非常に長い寿命を保てる」のです。
例えば;
● 法隆寺金堂: 約1300年
● 桂離宮: 約370年
● 中国最古の木造: 約1100年
● イギリス クリンステッド教会: 約900年
木造住宅は本来「長持ち」するのです。
ただし、条件付きです。
「腐らない」という条件が必要になります。
木材は、呼吸できる状態(木材の廻りを空気が流れるようにする)にすれば、腐らずに長持ちしますが、封じ込めてしまい、さらに壁体内結露などで湿気を多量に帯びるようになれば腐ります。シロアリもよってきます。
*壁体内結露で内断熱材にカビが発生している状態。黒い線はカビが発生しているところ。
これが、戦後の木造住宅に共通した「問題」です。
昔の家は、柱が露出した造り(真壁)になっていました。それは、木材をできるだけ露出して呼吸できるようにしてあったのです。
後で説明しますが、構造材(木材)が呼吸できるように施工するため「外断熱工法」を採用しました。
(この外断熱工法は、「地中熱利用」を実現するためにも必要になります。)
木材が呼吸できるように、このような工夫をして、長持ちする家造りを実現しています。
*外断熱工法は上図のように、構造材を外側で断熱しますので、壁空洞ができます。そこに空気を流すようにすれば、「木が呼吸する」ことが可能です。床下から壁空洞を通って小屋裏まで空気が流れるように工夫してあります。
*外断熱工法の場合、上図のように壁の中に空洞ができます。そこに空気を流す工夫があります。
(画像をクリックすると拡大表示されます。)
*上図のように、(赤い空気の流れ)床下から壁の中を通って小屋裏まで空気が流れる工夫がしてあります。(青い空気の流れ)は、外断熱材と外壁材の間を空気が流れるようになっている部分です。外壁材の熱(熱い&冷たい)を直接外断熱材に伝えない工夫でもあります。さらに、胴縁がシロアリ被害を受けないように、常に通気に触れさせています。
(1990年に外断熱工法を採用した理由)
● 壁内結露を防ぐには、私達が知っている範囲では、外断熱工法がもっとも防止効果が高かったためです。内断熱工法の場合は、露点(結露する温度)が壁内(内断熱材内)に発生する可能性があるためです。
*内断熱工法においても、断熱材の部屋側に“完璧なベーパーバリア”(=水蒸気を通さない層)を施工すれば、部屋内の水蒸気が壁内に入らないので、理論的には、壁内で結露しないのですが、当時は、内断熱工法において、断熱材の内側(部屋内側)に“完璧”にベーパーバリアを設置することが非常に難しかったため(どうしてもコンセントボックス、給排水管取り出し部分でベーパーバリアが切れてしまうためです)、内断熱工法を断念しました。
★詳しい内容は下記をクリックして御参照ください(↓)
【壁体内結露はなぜ発生するのか?】
「内断熱工法」でも、理論にそって、完全に施工(ベーパーバリアを丁寧に施工する事と外壁側に開放する事)をすれば、壁内結露は防ぐことが可能です。
また、外断熱工法で断熱施工すると「住宅の高気密化」が内断熱工法よりは容易に達成できることもわかりました。
高温多湿地域の千葉で「高断熱住宅」を建築する場合、外断熱による「高気密」が絶対に必要になります。湿気対策として最も大切なことです。
理由は下記の通りです;
1)外断熱による高気密は、柱や土台の外側で断熱気密にするので、木部が梅雨時の100%近い湿気を吸わない。(冬は乾燥空気を吸わない。)
2)外断熱による高気密は、柱や土台の外側で断熱気密にするので室内に外の湿気を入れない。(冬は低温乾燥空気を入れない。)
3)外断熱による高気密は、柱や土台の外側で断熱気密にし、床下空気が壁空洞を通って自由に動くので、床下を含めた家中が1台のエアコンドライ運転で効率よく除湿される。
国レベルで、寒地住宅化を推し進めている現状では、この点の理解が残念ながら遅れているのです。せっかく、外断熱を提供している側も、その効果を意識的に活かしていない場合があるようです。大変もったいないことです。
ここで、一般に言われている気密性の効果を整理してみましょう。
[次世代省エネ基準テキストによる]
1)隙間による熱ロスを少なくする。
2)断熱材の断熱効果を補う。
3)気密層が防湿層を兼ねる。(繊維系断熱材の場合)
4)計画換気をするための条件。(換気効率を高める)
次世代省エネ基準テキストの中に多湿(乾燥)外気から室内を守るという大切な効果は書かれていません。内断熱は外に開放しなければなりませんから外断熱だけの長所を言えないのでしょう。
●高断熱で低気密住宅は存在するのか?
●高気密は具体的には、どういうことか?
などと疑問が湧いてきますね。
ここで、高気密について説明します。
*高気密とは、住宅の気密性が高いということです。
住宅には「隙間」が必ず存在します。
この「隙間」(面積)が少ないと「高気密」住宅であり、隙間が多いと「低気密住宅(高気密では無いという意味で)」となります。
高気密であるかどうかを数値で測定する方法があります。
「気密測定」と言われている方法で、気密測定機によって、家の中から空気を強制的に外に出し、外気と家の中とで、ある一定の気圧差に達するまで、どれだけ空気を外に出したかを測定することによって、家の総「隙間」を測定します。
この「総隙間面積」を床面積(実質延べ床面積)で割ると、住宅の「隙間相当面積=C値(c㎡/㎡)」が算出されます。
このC値が5.0以下である住宅を「気密住宅」であると住宅金融公庫では定めております。
ただし、換気システムを充分機能させるには、C値が0.7〜1.0であることが必要である事は、今では常識になっております。
*上図は、気密測定の実施風景です。
話がそれますが、高断熱住宅で低気密住宅は存在するのです。
高断熱は、断熱材の施工(使用部材とその厚さ:断熱性能)が高断熱規格(次世代省エネルギー基準など)に適合しているかどうかであり、気密性能とは違います。したがって、高断熱仕様であっても、高気密化を意図的に施工しないと「低気密」になります。
高断熱で「隙間が多い」(低気密)と、例えば冬場、せっかく室内を暖房によって暖めても、隙間からどんどん寒気が入り込みます。寒気は室内の下部に溜まりますので(足下が寒い)、暖気は上に追いやられます。ただでさえ、暖気は上方に溜まりやすいので、室内での「上下の温度差」が大きくなります。
これを防止するためには「高気密」が必要になります。
1)梅雨時の湿気を家の内に勝手に入れさせない/冬場の外気(低温乾燥空気)を勝手に入れさせない
梅雨時に、住宅の隙間から、無計画に、多湿空気を室内に入れることは、「梅雨を家の中に呼び込む」ことになるのです。そして、上で述べましたように、いくら気密性能が高くても、柱や土台の外側で気密にすることが肝腎なのです。木部が湿気を吸ってしまう構造になっている工法は、梅雨の100%近い湿気をシャットアウトできません。
【外が「不快な」時に、家の中は快適であること】を求めて高性能住宅にするのですから、高温多湿地域【千葉】で「高性能住宅」を建てる場合、梅雨時に「家の中も梅雨にしない」工夫が必要になります。
梅雨の無い北海道で建てる工法を、多湿地域向けに改善する必要があるのです。
冬場も同様に、低温乾燥外気を勝手に家の中に入れないことが「過乾燥」を防ぐことになります。
冬の外気は、もともと乾燥空気ですから、それが、勝手に、大量に室内に入り込むと、暖房で暖められることにより、さらに空気が乾燥します。(今までの住宅では、加湿器は過乾燥を解消するために必要になります。しかし、根本原因が「隙間風と暖房」にあるので、常に加湿器を稼動し続ける必要があるのです)
2)計画換気を充分機能させる・除湿を効率よくおこなう
隙間がたくさんある住宅は勝手に新鮮空気が入ってくるのですが、新鮮空気が勝手に入るからといって、住宅全体が充分に換気されるとも限らないのです。
うまく全体が換気される場合もあれば、充分に換気されない部屋もできてしまう可能性もあります。「あなたまかせ」の換気になります。
良く例えられるのが「ストローの原理」です。
ストローは穴があいていなければ、小さな吸い込み力によってジュースを飲むことができるのですが、途中に穴があいていると、思い切り吸い込まないとジュースは飲めません。
住宅においても、隙間が少なければ少ないほど、計画的に(家中が充分換気できるように換気システムを事前に計画する)、簡単な換気能力で、家全体を換気できるようになります。
また、家の中の「水蒸気」(料理=ガス燃焼をすると水蒸気が発生します。)や「臭い」を速やかに外へ排出して、新鮮空気を家中に配るためには「高気密」が必要になります。
エアコンでドライ運転をするだけで、速やかに家中を除湿できるのも高気密住宅だからです。
「高断熱であれば、外側からの高気密であることが必要になる」
その重要性をおわかりいただけたでしょうか。
上記のように、夏季高温多湿・冬季低温乾燥の湿度問題をかかえる日本の「長持ちする家造り」を実現するために、「外断熱工法」「外側からの高気密」「壁内通気」「床下垂直換気」「換気システム」が必要になるのです。