【物より思い出!】=ご家族でメンテナンスを楽しみましょう。
突然ですが、私の思い出です。
母親の実家は、茨城県鉾田町にあります。
小学生の頃によく遊びに行きました。ずいぶん古い民家で、家の中は暗く、床板(たぶん杉板だったと思います)は真っ黒でガタガタしていました。冬は家の中も凄く寒く、煙草を良く吸うおじいちゃんと囲炉裏のまわりで食事をしていました。便所(トイレとよべるものではないですね)は家の外にあり、お風呂は、なんとっ、五右衛門風呂でした。
五右衛門風呂をご存知ですか?
浴槽は巨大な釜です。薪を燃やして水をお湯に沸かします。浴槽(=釜)には丸い木の板が浮かんであり、それを足で底に沈めながら湯に入ります。
ここでの生活(夏休みは1ヶ月近く、弟達・いとこ達と一緒に過ごしていました。)は心から楽しいものでした。スイカの食べ残しを庭において、それでカブトムシを捕ったり、彫刻刀で床に名前を彫りました。(おばさんには凄く怒られましたが・・・)真っ黒な床ですが、名前を彫ると、きれいな木の色がでてきます。本当に暗く汚れた家でした。どうして?あんな家に行くのが楽しみだったのか?
今でもよくわかりません。中学生のころまで、よく遊びに行きました。
ところが、なぜか、高校時代はほとんど行くことがなくなりました。
そして、大学入学が決まった時に、買ったばかりの車でおじいちゃんの顔を見に行くと、ビックリしました。
新しい家になっていました。
床はフローリングです。家の中にはトイレまであります。お風呂もユニットバスです。
囲炉裏もなくなり、おじいちゃんが炬燵に入ってテレビを見ていました。NHKのど自慢でした。
家は新しいのですが、なんだか居心地が悪くて、1泊だけして帰りました。
もちろん、彫刻刀で彫った「僕の名前」はありません。柱におじいちゃんが書いてくれた「頭の位置」もありません。
もしも、おじいちゃんの家が昔のままだったら、大学生になっても遊びに行っていたでしょう。自分の子供には「落書き」を見せたかった。
新建材を否定するわけではありません。適材適所です。無垢材を使えば、手入れは大変だし、醤油をこぼせばシミにもなります。反って、板の継ぎ目が空いて来ます。年月と共に色も変わります。
これを「経年美」と言います。「100年住宅のつくり方」を書いた野平先生は「古美る=ふるびる」とよんでいます。私は「思い出の色」だと思います。
「塗り壁の家」は、床材・建具(室内ドアなど)が無垢材です。設置した時から色が変わります。板が反ったりして、靴下がひっかかります。
無垢板ですから、傷は付きます。男の子は必ず名前を彫ります。ひょっとすると、マジックでいたずら書きをしてしまいます。松の梁からはマツヤニが垂れます。
ウッドデッキはメンテナンスが必要です。数年に一度は塗装が必要になります。
メンテナンスが大変です。業者に頼めば費用もかかります。
だから、ご家族でメンテナンスしてみてください。
夏の暑い日に、ウッドデッキを塗装する姿を想像してください。小さなお嬢さんに手伝ってもらい、一生懸命塗ります。業者みたいにはうまく塗れません。
朝から夕方までかかってしまいました。汗だくです。横でお嬢ちゃんも頑張っています。でも、楽しそうですよ。
床をオスモカラーで塗装するのも同じです。
内装に塗り壁を使う方は、1室分は家族全員で塗り壁を施工しましょう。職人さんに教えてもらいながら塗ってみましょう。上手く塗れません。大変な作業です。でも、家族全員の手形を入れました。
50年後に、思い出が蘇ります。お父さんの姿です。家族で造った・維持した家です。
家の中はリフォームできません。思い出を消してしまうからです。
そんな大変な家です。
だから、私は「塗り壁の家」が好きです。