朝日新聞に「地熱住宅」が取り上げられました!
【2001年5月28日月曜日 朝日新聞 朝刊/(くらし)から抜粋】
いい家に住みたい
きょうは「地熱住宅」
●夏ひんやり 冬ぽかぽか地熱活用 省エネ住宅
●アイヌ民族の知恵ヒント
夏涼しく冬暖かい地熱の特性を生かした省エネ住宅が、千葉県などで建てられている。冬は暖房がいらず、夏も少しのエアコンだけでしのげるという。北海道のアイヌ民族の伝統住宅に、発想のヒントがあった。住み心地や省エネ効果はどうなのだろう。
「地熱住宅」は千葉県や茨城県に約400棟建設された。開発した玉川建設(千葉県茂原市)住宅研究室の宇佐美智和子・主任研究員に案内をお願いし茂原市の看護婦(今は看護士)Aさん(40)宅にお邪魔した。
屋根裏の部屋に入ってみると、数本の大きな配管がところ狭し通っている。この配管は、2階天井の裏と床下を結んで延びているそうだ。宇佐美さんは、「夏は地温に支えられてひんやりした床下の空気を2階天井浦まで吸い上げて、2階の部屋に放出する。逆に冬は、2階天井近くにたまる暖気を床下に流す仕組みなんです」と説明した。
地熱温度一定
地表から5m下の地中温度は15〜18度程度でほぼ一定しているため、外気に比べると夏涼しく冬暖かく感じる。おおむね東京より西では、夏の平均が15度、冬18度と、冬の方が暖かいという。この地熱を生かす心臓部は床下らしい外気が行き来する従来の床下のままでは、地熱に蓄えられた熱が建物には伝わらないl。そこで、この地熱活用住宅では床下まで断熱材ですっぽり覆い地中、土間床下コンクリートから床下にかけて「蓄熱帯」や「蓄冷帯」を作って「床冷暖房」のような役割をさせる。夏の床下の冷気や、冬の2階天井近くの暖気を、ファンのついた配管で建物内に循環させる。ファンの電気代は月数百円前後で済むという。窓は二重窓だ。宇佐美さんは「北欧などと違い、日本の冬は日射熱が強い。昼は1枚にして日射熱を取り入れ、日が落ちたら2枚にして寒気を遮るんです。」という。暖まった空気を配管で床下や1階に下ろし、自然の床暖房にもする。費用はどのくらいかかるのだろう。このお宅の場合、建築費約3800万で、うち断熱材や二重窓などシステム 関連の費用が約600万だっだ。在来の住宅より2割ほど高くなるという。「ただ、夏は夜寝る前に1時間エアコンをかけるだけ、冬は暖房なしで過ごせます。5月の夏日にも、夕方ちょっと窓を開けただけで、全くエアコンはかけませんだした」とAさん
湿気も防げる同じタイプの住宅に住む川合元子さん(56)は「ジメジメ感がありません」と梅雨時期の湿気封じが気にいているようだ。床下からの湿気を防げるからだという。この住宅は、昨年度の環境・省エネルギー住宅賞に入選した。審査委員長を務めた上杉啓・東洋大工学部教授(建築構法)は「熱変動の少ない地熱を利用するという発想は面白い。太陽熱だと天候に左右されるが地熱はそれがないのがメリットだ」と話す。ただ、限界もあるようだ。宇佐美さんは「北関東以北では、冬に暖房なし、というのは難しい。南関東以西でも、人によっては暖房が必要になるケースはありますね」と話している。
別の方法でも
これとは、別に、地熱を利用する別の方法がある。地下に埋めたパイプに不凍液を循環させ、地温で暖めたり冷やしたりして、冷暖房に活用する「地中熱ヒートポンプ」というシステムだ。岩手県は今年度の事業で、この方式を利用したモデル住宅を建設する。事業費300万円がポンプの費用だという。地中熱ヒートポンプは、欧米で実用化が進んでいるシステム。地中深くが15度前後で保たれていることに目をつけ、夏の場合は。地温で冷えたパイプ内の不凍液を地上までくみ上げ冷房に利用するという原理だ。岩手県資源エネルギー課の担当者は「このシステムで実際に電気代が減るがどうか、モデル住宅で検証したい」とはなしている。
伝統住居「チセ」を研究
宇佐美さんは81年から、旭川郷土博物館(現旭川市博物館)と共同でアイヌ民族の伝統住居「チセ」の研究を10年間かけて実施したという。復元住宅に実際に宿泊し、温度測定をしたりした。その結果セチでは年中24時間土間で薪を燃やし続けたことで、外気が零下10度の真冬にも、地下から土間床にかけて10度程度の「蓄熱層」を作っていたことが推測できた。薪の火のおかげで地中が冷え込むことがなかったと考えられる。北海道の厳しい冬を乗り切るアイヌの知恵から、夏にも応用できる土の「蓄熱力」に注目したという。
朝日新聞 2001年5月28日(月曜日)朝刊のくらし欄に、「地熱住宅」として、私達の外断熱住宅が取り上げられました。「外断熱で甦る伝統の知恵と地熱利用」のエコシステムの「Aさん宅」について、少し補足説明いたします。
「Aさん宅」の規模
1階床面積 139.5㎡ 2階床面積 53.0㎡ 延べ床面積 192.5㎡
(外断熱のため床下も小屋裏も室内側となり、実質延べ床面積が 297.0㎡あります)
約60坪の住宅ですが、利用できる空間は90坪分あり、延べ床面積の1.5倍の実質面積があります。
「Aさん宅」の屋根裏部屋にある配管写真
2世帯の大住宅ですから、床下システムが2系列あり、熱交換器も最大のものが設置されています。2階の小屋裏でなく、1階の小屋裏(下屋)であるため、中継点的な要素も加わって特別に過大設備となっております。
床下システムも延べ床面積180㎡以下であれば1系列ですから、配管も1/3以下でスリムです。新聞紙上の河合邸がこれに当たります。(この写真が載ればよかった!)
「Aさん宅」のように、床下システムと熱交換器をつかう地熱活用のための費用は、建築費の約2%。標準システムで1%内外。
建物が次世代対応の外断熱住宅であれば、換気と床下システム関連の費用は建築費の1%〜2%程度です。1枚ガラスの一般の内断熱住宅より1割強の費用をかければ、地熱利用の長持ちする住宅になります。
「Aさん宅」はカレンダー機能で開閉自在の自然大量換気用の大きな換気塔(ルーフウインド内設)が2つ立っているなど、特別仕様を盛り込んだフル装備の住宅です。