良質な住まいと心地よい暮らし「木の家に暮らす」 2006年3月号
【株式会社地球丸発行 雑誌「木の家に暮らす」2006年3月号】
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★掲載記事の内容を抜粋★
■いま注目のエコな木の家をのぞいてみよう
エコロジー&エコノミーな木の家は、室内の冷気や暖気を逃さない高気密高断熱が基本。
それに加えてパッシブソーラーなどの工夫が加わるのだが、ここではあまり知られていない、注目の地熱利用を採用した住まいを見てみよう。
アイヌ伝統民家を現代に再現する外断熱工法の地中熱利用住宅
アイヌの伝統民家「チセ」は、笹を葺いただけの建物である。床はなく、地面に葦を敷きつめただけで厳しい冬を快適に過ごしていたという。明治時代に日本式家屋が導入されたが、彼らはチセのほうが暖かいといって、日本式家屋の横にチセを建てていたという記憶が残っている。
夏の暑い陽射しは、地中に大量の熱を蓄える。この熱は秋から冬にかけて大気中に放出されるのだが、地下5mともなると土の蓄熱効果によって外界の影響を受けにくくなる。地表面に近い部分では温度が下がっていくが、地下5mではでは一定の温度を保った状態が続くのである。
わかりやすい例として、井戸水が年間を通して一定の温度を保っているのは、この地下の蓄熱層を通っているからだ。
一般的な日本の家屋では、床下に外気を入れる構造になっているので、地下から放出される地熱はそのまま外気に吸い込まれてしまう。そこで地熱が外気に触れて逃げないようにすると、地熱がそのまま建物内に滞留するようになる。これが伝導型の地熱利用の仕組みだ。そのためには建物を断熱材で覆い、さらに高気密にする必要がある。また建物上部にたまる暖かい空気を床下に送ることで、床下直下の地表面の温度が下がらないように工夫している。こうすることで冬の間に外気に触れて下がるはずの地表温度が、地下5mの温度と同じように保たれることになる。
このように地熱を利用する場合、建物に高い断熱性能が求められるが、柱と柱の間にグラスウールなどの断熱材を詰め込む従来の方式では壁の内部の通風が悪くなり、構造材を腐らせることも。
戦後の日本家屋が30年程度で建て替えになるのは、このような「内断熱」方式が原因のひとつだという。反対に昔の日本家屋は長持ちしたものの、通気性を重視したつくりでもあるため、冬は寒くなる。
そこで、壁の外側に断熱材を張る「外断熱」で壁の内部を何もない空間とし、通風を確保している。
アイヌの伝統民家を10年研究した結果から生まれたという外断熱地熱住宅は、新たなエコ住宅として注目を浴びつつある。