【賢者の贈り物】(パート1)
実は、子供のころは、両親を嫌っていました。本当に嫌いでした。一緒に旅行に行くのが苦痛でした。そんな少年時代を過ごしていました。
両親は二人とも忙しく、私はおばあちゃんに育てられました。よく、浅草の花やしきに連れていってもらったことを覚えています。
父親は特に厳しく、電車に乗った時、空いている席に座ろうものなら
「おまえは、料金を半分しか払っていないんだ。座る資格は無い!」
と、電車の中で、みんなの前で叱られました。
母は、男の子3人に手を焼いていたのか、いつもイライラしていました。私が弟と喧嘩すると、理由も聞かず、私だけを怒りました。
「長男が弟の面倒をみるのがあたりまえでしょ!」
だから、両親が嫌いでした。
いつも、私だけが悪者扱いされていると感じていたからです。たまに、本当にごくたまに家族旅行に行ったのですが、弟二人は喜んでいましたが、私は辛くてつらくてたまらなかった。
「父も母も、きっと俺のことを憎んでいるんだ!」
そう思う日々でした。
しかし、たった一つの手紙が私の心を変えたのです。
大学は家から遠かったので、学生寮に入りました。学生寮への引越しは、両親が付いてきました。なんだか、凄く恥ずかしかったので、「なんだよ、用事がすんだら早く帰れよ」といって追い返しました。
学生寮は全て個室であったため、入学式までの2日間は一人でポケ〜と部屋の中で過ごしていました。なんだか急に寂しくなりました。
入学式も済み、クラス編成がおこなわれ、授業が始まったころ、手紙が届きました。母からの手紙でした。手紙には、生活上の注意点など、細々としたことが書かれてありました。
「なんだよ、こんなことをわざわざ書かなくても充分わかってるよ」そんな些細な内容でした。
最後に、特別汚い字で何か書かれてあります。父の字です。
「卒業するまで家には帰るな。
少ないけど、なんとか仕送りはする。
病気になった時だけ帰ってこい。」
現在の私は愛娘の成長を日々驚きと共に感じています。朝目覚めると、横で娘が笑っていることがあります。44年間もかかってようやくわかりました。
子供を憎む親など一人もいないことを。
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