★第1章 外断熱だけに注目すると危険です!(パート2)
これをお読みのあなたが「本物の家造り」を探すため、まだまだ知らなければいけないことがあります。
「一部だけ外断熱」ということがあります。
これはハウスメーカー・工務店共に行っていることが見かけられます。
特に多いのが「壁だけ外断熱で、屋根は内断熱(天井裏での断熱、もしくは天井内部から断熱材を吹き付ける)」というものです。
屋根部分も適正に「外断熱」するためには、職人さんの高い技術と手間がかかります。そこで、「坪単価を安くするため」(またまた出ました)に、屋根は外断熱にしないで、天井断熱(天井裏にグラスウールなどの断熱材を置く方法)にしています。
一部でも「外断熱」施工しているので、それを「外断熱の家」として宣伝しています。
これにはコメントできません。なんで、このような「すぐに変だとわかること」を真面目な顔して説明できるのか理解できません。
また、外断熱工法と言っていながら「基礎は内側に断熱する」というものもあります。
基礎もその外側に断熱するのが「外断熱工法」の基本です。
この方法を採用している住宅会社は「基礎の外側に断熱材を貼ると、その断熱材の中にシロアリが侵入してきます」と言っています。だから「シロアリが侵入しないように、次善の策として、基礎の内側に断熱材を貼ります」となります。これは5年ほど前であれば、決して間違った工法ではありません。実際、当社でも以前基礎断熱用に使用していた「スタイロフォーム」では、次の写真のように、断熱材の間にシロアリが侵入する場合があります。
こうなるのが怖いので、「本来であれば、外断熱工法は基礎の外側に断熱するのが正しい」と十分にわかっている会社でも、基礎の内側に断熱してしまいます。
だから、私は「基礎用断熱材がシロアリに侵入されない方法を全国の工務店さんにお伝えしているのです。
*住宅建築会社が恐れる「基礎用断熱材の中にシロアリが侵入する」危険性は、現在では、下記の方法で解決されています。(下記の方法を全国の工務店さんに指導しています)
【基礎断熱材にシロアリを侵入させない方法】
1)防蟻処理された断熱材を使用すること。
2)防蟻処理された断熱材の上端をシロアリが食い破れないテープで処理すること。
3)断熱材を外側(地中から)守るため、タームガードシステムを設置すること。
この3点について、詳しく解説しましょう。
1)防蟻処理された断熱材を使用すること。
・まずは、使用する断熱材そのものが「シロアリ対策」されている断熱材を使用します。断熱材は数種類あります。当社で使用している防蟻処理済断熱材は「パフォームガード」という製品です。
*パフォームガード http://www.afm-sips.com/page/presentation/toppage.html
この製品は、断熱材が均質にホウ酸を含んでいます。このホウ酸によって、シロアリに食べられにくい性質を有します。ただし、絶対に食べられないわけではありません。特定の条件(地中の含水率が極めて高い地域など)では、下記のように、断熱材に侵入される可能性があります。
含水率の高い土壌において、シロアリが上記/右図のように、断熱材の表面を繰り返し齧ると、材料の中に含まれているホウ酸が熔脱してしまいます。その結果、断熱材の中を少しずつ、長い時間をかけて、侵入する可能性があります。
・また、この断熱材は断熱性能が若干劣るため、壁用断熱材よりも10ミリ厚くします(厚さ:60ミリ)
2)防蟻処理された断熱材の上端をシロアリが食い破れないテープで処理すること。
・非常に稀なケースですが、上記のように、断熱材の中をシロアリが侵入する可能性がゼロではありません。そこで断熱材の上端を「アリダンGAテープ」で覆います。
*アリダンGAテープ http://www.fukuvi.co.jp/product/028.php
ここまでやると、最悪でも、断熱材の中でシロアリの侵入がとまります。断熱材の中にシロアリが蟻道をつくっても、それによって極端に断熱性能が低下するわけではありません。それでも、断熱材の中にシロアリが入っているのは気持ちの良いものではありません。
それを防止する手段が下記の方法です。(基礎外断熱専用の防蟻処理システムです)
3)断熱材を外側(地中から)守るため、タームガードシステムを設置すること。
・三井化学アグロが提供している「タームガードシステム」http://www.termguard.jp/ は基礎外断熱に最適なシロアリ防除システムです。基礎の廻り(地中)に薬剤を注入するための配管を設置します。
この配管内に薬剤を注入します。
この3点の方法により、基礎を外断熱にしても、シロアリの心配がなくなります。
こんな例もあります。
外断熱に限らず、高断熱・高気密住宅を建てようと考えている方が指標としているものに「次世代省エネルギー基準」というものがあります。
これは、簡単に言えば、公に認められている「高断熱・高気密」の基準です。
いろいろな会社が、勝手に「当社は高断熱・高気密住宅ですよ」と言っていたのでは、一般の人はどれも同じに思えてしまいます。
そこで定められたのが「次世代省エネルギー基準」です。
この次世代省エネルギー基準では、屋根の外断熱材(ボード状発泡ポリスチレン材 B類3種)の厚さ基準値は【115ミリ】です。
しかし、大手の会社(ハウスメーカー)では、特別に認定を受けたからといって【50~55ミリ】でも次世代省エネルギー基準適合住宅として提案しています。
これって、ちょっと考えると変だと思いませんか?
外断熱材の厚さが55ミリでも、公的機関に認可されたから「次世代省エネルギー基準」に適合するということは、特別に認定を受けた建物だけは屋根が受ける日射量が弱くなるのでしょうか?
太陽にとっては、どこの家も同じですよね。(笑)
こんな状態では、せっかく定められた「次世代省エネルギー基準」が、一般の人にとっては基準になりません。
もう一度申し上げます。
「外断熱工法」だけを注目しないで、家造り全体をもっともっと知ってください。「外断熱工法」という一時の流行に乗っかっているだけの会社に建築を依頼するよりは、「内断熱工法」で真剣に家造りに取り組んでいる会社に依頼した方が失敗しないかもしれません。そして、そのような真面目な会社がたくさんあります。
むしろ、流行にだけ注目している会社に家造りを依頼すると、すごく危険であることを知ってください。
◎ポイント
①一時のブームで「外断熱工法だけが良い」と思うことは大変危険です。その建築会社が、何を目的として「外断熱工法」を取り入れたのかをしっかりと聞いてください。
②外断熱工法では「床下も室内と同じ環境になる」と考えるのが必然です。そのため、床下に化学物質による「シロアリ対策」をおこなうと非常に危険です。
③望ましい外断熱工法とは、「屋根・壁・基礎も断熱材が途切れない外断熱施工」をするものです。
④断熱工法だけに注目するのではなく、家造り全体に関する情報を集めてください。